川上弘美 「おめでとう」
やはり、このひとの世界は深くて興味深くて、趣があります。
とってもすてきな短編集です。
えくにかおりの次にすきな作家さんです。
この本は、いきなりすごい。
「いまださめず」というお話。
タマヨさんという古い知り合いに会いにいくため、
新幹線に乗るのだが、
そのなかで、主人公は、
おなかがへったからといって、
おみやげの笹かまぼこを全部食べてしまう。
2作目の「どうにもこうにも」では、
幽霊にとりつかれる。
そんなかんじで、
「ありえないよー」
というようなストーリーが、
まるですべて当たり前のことのように、
淡々と、さらさらと進んでいくので、
ついつい読み進めずにはいられなくなってしまう。
いちばん気に入ったのは、
「冷たいのがすき」
という短編です。
章子の独特の言い回し、ひとつひとつを真似したくなってしまう。
これからまねしようと思ったのは、言い回しではないのだけれど、
クリスマスをそば屋かうなぎ屋で過ごす、ということ。
クリスマスだからといって、すてきなディナーを食べなければならない、
だなんて、
一体だれが決めたのかしら。
わたしは自分の誕生日だから、おでかけしておいしいもの食べたいけれど、
雰囲気のいい店はどこもかしこも大混雑でおちつかないのだ。
でも、そば屋かうなぎ屋なら、おいしいけど、混まない。
特に、クリスマスの夜は。
来年からは、わたしたちもそうしたいと思った。
そして、最後に衝撃的だったのは、
「運命の恋人」。
これは、こんな書き出しで始まる。
「恋人が桜の木のうろに住みついてしまった。」
そんなばかな、と思う一方、つい笑ってしまったよ。
ほんと、シュールな物語を書いたら、
このひとの右にでるひとはいないですね。
たのしい本でした。
このひとの本は、はずれなし。
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