寝言観察日記。
恋人が、土曜の朝からおでかけすることになった。
恋人にとっては、土曜の8時半に起きることは、
なかなかの勇気がいることなのだ。
わたしも誘われたけれど、土曜は、昼まで眠りたいので、
やんわりとお断りした。
金曜の夜。
気がつくと、恋人は眠りこけていた。
まんがの本を読む体制を保ったまま、眠っている。
しっかりと、まんがのページの間に指をはさんだまま。
いつも思うが、眠りにつくことについては、彼は天才的だと思う。
「歯はみがいたの?
お風呂入ったの?
目覚ましセットしたの?」
と、彼を揺り動かしながら話しかけたら、
奴は、
「ぐー。」
といびきをかいた。
話しかけてんのに、寝るんじゃねえ。
そして、ひとこと。
「…ぎがんてつどう…」
…銀河鉄道のことですか。
それだけでも意味不明なのに、
銀河を「ぎがん」って、そんな言いまつがいは、ありえないぞ。
久しぶりに、ジャングルさんであそんでみようかしら。
と、わたしのもう一方の人格が悪魔のごとくささやいた。
わたしは、夢と現をさまようジャングルさんに話しかけた。
わたし:「今日のご予定は?」
ジャングルさん:「…天国…。」
えええええ、死んじゃうのかよ、それは困るぞ。
そして、そのあとに言ったせりふが、こちら。
「海水2パーセントのマックの店員が、優しくなりました。
たいへんだーーー。」
それ、何の話?
海水2パーセントの店員て、どんな奴?
恐らく、彼は起きなくてはならないことをわかっているのに、
体がついていかないのでしょう。
今度は半眠りの状態で、
「るーるるーー」
と歌いだしたよ。
眠りながら歌えるって、すごいな。
このころには、だいぶ覚醒してきて、
自分の言っていることのおかしさに、自分で笑うようになってきました。
その後も、世にもくだらない寝言兼ひとりごとは続く。
「めざましー、とんとんとーん」
と言いながら、携帯を探し始め、
「眠いでしょ?そうなのよー」
とオネェ言葉で自問自答し、
「ゴム測んねーと」
と、仕事のことを思い出し、
「ぷっちぷっち」
と言いながら携帯のボタンを押すマネをして、とどめのひとこと。
「ここ、どこだっけ。」
きみの家です。
起きているのに、眠っている状態の人間を見るのは、初めての経験です。
わたしがかわいそうな目で彼を見ていたら、
ジャングルさんは、言い訳を始めました。
「ちがうよ、おれ、起きてるんだけど、
ここがどこの駅だかわかんなくなっただけなの。
竹内さんもいなくなったし、
そんなこんなで…$%&※#☆(フェードアウト)」
竹内さんて、だれですか。
そんなひと知りません。
ようやく無事に携帯のアラームをセットできたと思ったら。
携帯にアゴを乗せて寝てました。
器用ですね。どうしてそんな曲芸ができるんでしょうか。
ジャングルさんの体勢をととのえながら、
話しかけようと思ったけれど、もうききたいこともなくなったので、
「ねーねー、わたしのことすき?」
ときいてみたら、
「う…」
と言ったので、
「いつまで?」
ときいたら、
「…無期懲役…」
わたしは犯罪か。
- 関連記事