うそつきな恋人。
恋人は、家に帰ってくると、まず、服を脱ぐ。
夏なら、部屋ではたいてい、ぱんつ一丁でいる。
冬は、寒いので、Tシャツは着たまま。
でも、はだしにぱんつ一丁でうろうろしている。
ある日、仕事から帰ってきた恋人は、
いつものように服を脱いだ。
そして、その服のにおいをかいで、
満面の笑みを浮かべ、こう言った。
「わー、すごい、これ、まだ洗いたてみたいに、
洗剤のにおいがするよー。
かいでみる?」
彼は、わたしへその服を差し出した。
そうか、いつも使ってる柔軟剤は、
消臭効果もあるのかなあ、
などと思いながら、ためしにかいでみた。
そして、絶句した。
くさい。
まぎれもなく、おっさんのにおいがする。
くさい。とってもくさい。
恋人は「ケケケケケ」と笑いながら、
「一日はたらいたんだから、
おれのにおいがしみついてるに決まってるじゃん」
と言った。
………むかつく。
奴は、どうしてこんな仕打ちをしたのだろうか。
最近のわたしは奴より早く帰宅し、
毎日ごはんとお弁当をつくっているというのに、
そうじも洗濯もきちんとしているというのに、
もう、眠っているときにちょっかいかけたりしていないというのに。
どうしてこんなことをされなくてはならないのか。
わたしは、本気で頭にきた。
服のにおいをかがせた恋人に。
おっさんのにおいを放出する恋人に。
おっさんのにおいそのものに。
今度同じことをしたら、また家出してやる。
といっても、
今後、恋人の脱ぎたての服のにおいをかぐなんて、
もう二度としないと誓ったけれど。
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