ABSOLUTE LIFE

すてきなものにかこまれ、すてきな音楽をきき、すてきなものをたくさん見ることが、心のビタミン補給です。
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三浦綾子 「細川ガラシャ夫人」

高校生くらいのときに、初めて三浦綾子を読んで以来、
わたしはずーっと彼女の作品を読み続けている。
氷点」も「塩狩峠」も、
何度も何度も読み返してる。

以前、雑誌の特集で、
「読むべき本」
みたいな記事があって、
そのなかで、とある俳優さんがすすめていたのが、
この「細川ガラシャ夫人」。

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歴史ものには、全然興味がわかなかったのだけれど、
この作品だけは、別。
おもしろすぎる。
笑える、って意味じゃなく、感動ってことね。
残酷な描写も多いけど、
これは、フィクションではなく、実際にあったことなんだよね。
いろんなことを考えさせられる。

明智光秀の娘として生まれた玉子が、
細川忠興に嫁ぎ、さまざまな苦難を乗り越えて、
キリスト教にめざめていくという、
波乱だらけの人生を描いたもの。

この時代、男たちは、
「自分の家柄を守る」
ことが、第一の使命とされ、
女たちは、あくまでもその道具に過ぎなかった。
今では考えられないことだけれど、
人間が「自分らしさ」を求めることなんて許されなかった、
というより、
そんなことを、誰も考えていなかった時代だ。
今なら、そういう時代があったということのほうが、
信じられないくらいなのだが。

わたしは、宗教を信じないので、
命をも惜しまない信仰の強さは、
まったく理解できない。
けれども、キリスト教の思想には、
いくつか共感できるところがあるし、
すばらしいと思う考え方も説いてあった。
ただ、それを自分のものにできるかどうかは、
また別なんだけれど。

玉子の、あまりにも潔い最期は、かっこよすぎる。
自分が、いまここで殺されるとわかっているとき、
ひとは、他人を思いやるような余裕があるのだろうか。
家族のためならば、
よろこんで命を差し出すことが可能なのだろうか。
物語だとわかっていても、
つい、自分と玉子の貴さをくらべてしまい、
自分の愚かさが、恥ずかしくなります。

命をかけて、毎日を過ごすあの時代のことを考えたら、
命に関わらない、ほんのちっぽけなことに心を砕いているのが、
とても情けなくなります。
ああいう時代を経たからこそ、
いまのこの平和な世の中があるんだー、
と思ったら、
わたしたちは、もっと、必死に生きなくちゃいけないんだと思うの。
「自分らしく生きる」、
ということが許される世の中に生きているわたしたちは、
もう、そのことだけでしあわせなのだ。

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