ABSOLUTE LIFE

すてきなものにかこまれ、すてきな音楽をきき、すてきなものをたくさん見ることが、心のビタミン補給です。
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村上春樹 「ノルウェイの森」

恋人のことで悶々としているあいだ、
ひさしぶりに「ノルウェイの森」を読んだ。

   

大学生のころにこの本を買い、
それから何度も読んでいたのだが、
いまいちこの本のよさを理解できないでいた。

でも、今回、初めて完全に理解した、
この本の言いたかったこと、
それぞれの登場人物の気持ち。
そのほかの、いろいろなことも、すべて。
ものすごく心につきささるフレーズが、たーくさんあった。
あー、世界のムラカミハルキに、初めて出会った、
というかんじがした。
いままで何度も読んでたのに。
それほど、彼の描く世界が深かった、ということなのだな。
わたしは彼の作品を理解できるほど成長していなかった、ということだ。

直子がどうしておかしくなってしまったのか、
永沢さんのことば、
ワタナベトオルがどうして緑と直子の間でゆれていたのか、
全部、わかった。

あまりにも共感できすぎる部分があって、
どれがいちばんかはわからない。
でも、いちばん
「そうそう、これなの!」
って思ったのは、緑のことば。
(思い出したのを書くので、原文ではありません)

「たとえばいまわたしがショートケーキを食べたいって言うと、
 あなたは何もかも放り出して走ってそれを買いに行くの。
 そして帰ってきてケーキをさしだすと、わたしは
 『もうこんなの食べたくない』って言って窓から放り投げるの。
 そしたらあなたは、こう言うの。
 『悪かった、緑。
  きみがいちごのショートケーキを食べたくなくなることを
  予測しておくべきだった。
  お詫びにほかのものを買ってきてあげよう。
  何がいい?』」

そうそう、これこれ!!
と、思った。
「ショートケーキを食べたい」
って言ったときに、女が求めるのは、
ショートケーキそのものではなくって、
自分の望みに対して、
誠意を持ってこたえようとする姿勢そのものなのだ。
もちろん、本当にケーキを食べたい場合もあるけれど。
それを理解できていない男のひとの、なんと多いことか。

そして。
ワタナベトオルのとなりで手紙を書いたシーンもずっしりと、きた。
緑は髪型が変わったことをワタナベトオルに気づいてほしかった。
でも、彼は気がつかなかった。
そのことでものすごく腹をたてた緑の気持ちがよくわかる。
そういうちょっとした変化に気づかないのは、
その存在を認めないことと同じくらい重罪なのだ。

わたしが恋人に対して怒っていたのも、
そういう細かいことだった。
でも、女心というものは、そういうものだ。
それを理解できない、というのなら、
女のひとといっしょにいないほうが得策だ。

わたしは緑がとてもすきで、
直子よりも断然緑のほうがすきだった。
彼女の考え方は、わたしの考え方にとても似ていた。
下ネタに対する異常な興味は別として。

そして、永沢さんのこのことばも、ずっしりと、きた。

「自分に同情するのは、下劣な人間のすることだ」

わたしはまちがいなく、下劣な人間だ。
でも、自分に同情しない人間なんて、いるんだろうか。
きちんとそれを制御することができるようになったら、
もっとりっぱな人間になるんだろうなと思った。
そして、実際に永沢さんみたいなひとも、
この世の中には存在するんだろうな、と思った。

あまりにも暗くて重たい話なので、
しばらく読み返すことはないと思うが、
それでも、ようやく彼の作品を理解できたことは、
わたしにとって大きな収穫だった。

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