におい選手権。
その日は日曜で、わたしはものすごく長いこと歩いた。
だって、ものすごくいい天気だったのだ。
雨は一度も降らず、日差しは常に最強で、
久々に夏らしい日だった。
もちろん、わたしはスニーカーで歩いた。
その中身が、なかなかなにおいであることに、気づいては、いた。
でも、その日はパーフェクトにたのしかったので、
家に帰ったあと、自分の足と靴下のことをすっかり忘れてしまっていたのだ。
夜、家に帰ってみると、
ホストマザーのカーマンが、リビングでペディキュアを塗っていた。
「昨日うさぎのピンクのつめを見てね、
わたしもやろうと思ったのー。
どう?いいでしょ?」
と言う。
そう、こっちにきてからは、時間がたっぷりあるし、
家事をする必要がないので、
毎日ちゃんとマニキュアを塗っているのだ。
「うさぎも塗る?いっぱいあるよ。」
カーマンはオールマイティーなビューティシャンで、
ネイルもできるので、マニキュアをいっぱい持ってる。
わたしはちょうど、自分のペディキュアが
はげかけているのが気になっていたので、
「ねー、金色のネイル持ってない?」
ときくと、
オレンジ色に近い、金色とも言えなくはない色があったので、
それを借りることにした。
ぽいっと靴下を脱いで、「しまった!」と思った。
今日のわたしの足は、いつもにも増して強烈だ。
「まず初めに、シャワー浴びないとやばいわー。」
と言い訳したが、時すでに遅し。
「そうしたほうがいいわねー、においがしたもの。」
と、カーマンは言う。
…そんなに強烈だったか…、猛烈に反省。
でも、彼女は平然としてこう言った。
「でも、うちのだんなは、もっとすごいわよ。
うさぎは足だけど、彼はわきの下がすごいの。」
偏見かもしれないけれど、なんか日本人よりすごそうだよね。
だって、体毛多いしさ。
フェロモンとか、濃そうだし。
と思ったら、だんなさんのマイクが、
「そうなんだよー。
におい選手権があったら出たいね、きっといい線いくよ」
と、あまりにもふつうに言った。
彼は、わたしの学校の先生で、普段はとてもきちんとしているのに、
こんなおもしろいことをさらりと言うなんて。
そのギャップがわたしはおもしろくて仕方がなかった。
「わたしも出るー。」
と言うと、
「おう、いいよ。
でもね、おれは優勝できる自信はないんだよね、
だって、朝に地下鉄乗るとさ、
ほんとにすっごいひと、たまにいるからね。」
と、本気な顔で言う。
いや、そんなにまじめに考えなくても、
そんな大会絶対存在しないから。
わたしはこのひとの天然をものすごく気に入っている。
ふたりはものすごく自然体だ。
飾らないし、気取らない。
イギリス人は、きびしいひとが多いらしいのだけれど、
わたしはこのふたりのお家にステイできて、本当によかったよ。
今まで、英語を使ってひととコミュニケーションするとき、
どうしても壁があって、それを取り払えなかったのだけれど、
最近は、その壁を感じずに、
日本人と同じ感覚で会話できることが多くなってきた。
前よりもナチュラルにしゃべれるようになったし、
自分の伝えたいことが、英語で出てこないとき、
それを自分の知ってることばに置き換えられるようになった。
知らない間に、だいぶ成長してきたな。
たった4週間でここまでなれば大したものよ、
と自分で自分をほめたい。
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