恋人との電話。
恋人には、ほぼ毎日電話をしている。
恋人は、異国の地でふらふらしているわたしを心配しているし、
わたしは、再び名古屋でひとりぼっちになってしまった恋人を心配している。
心配していた通り、わたしが旅立ってからというもの、
彼は早朝から夜おそくまで働きづめになり、
体重が5キロも減ったらしい。
「40キロくらいになった」
と言っていたので、わたしはキレた。
せっかく体重を増やしたのに!
本人曰く、「夏ばて」なのだそうだが、
わたしはそうは思わない。
夏のあいだ、時差は8時間。
なので、授業が終わるお昼くらいに電話をすると、
ちょうど恋人が帰ってくる時間になる。
話す内容は、とてもくだらない。
「今日もイギリスの天気はこわれてるよ」
とか、
「今日もうんこふんじゃったよ」
とか。
わたしはよくうんこを踏んでしまうので、
それを報告すると、恋人は非常に喜ぶ。
「わー、うんこマンだー」
と、とてもよろこぶ。
こんな恐ろしく低レベルな会話を、海と時間を越えて、
国際電話で話している。
こないだの会話は、ちょっとレベルが上がって音楽についてだった。
その日、授業で音楽の話題を取り上げたからだ。
わたしは恋人に、
「どんな音楽がすきなのですか?」
と、お見合いのごとく堅苦しい質問を投げかけると、彼はこう答えた。
「えーと。尺八。」
初耳です、きみが尺八をすきだなんて。
それは、音楽ではないのでは。
それは、楽器だと思うのですが。
「じゃあ、ジャンルでいえば、どんなかんじの音楽がすきなの。」
と聞くと、
「夏らしい音楽だったら、なんでもすきだよ」
という超アバウトな答えが返ってきた。
さっきの尺八との関連性は、ゼロですね。
「ということは、TUBEとかすきなわけ?」
ときくと、
「そうだね、TUBEすきだよ」
と言う。
そんなのうそだ。
わたしは奴がTUBEをきいたり歌ったりしているのを知らないし、
平井堅とケツメイシとレゲエ全般がすきなのを知っているし、
TUBEは楽曲に尺八を使用していないだろう。
呆れ果てて、わたしは話題を変え、
「今日ね、ノッティングヒルのマーケットにいってくるよ、
映画の「ノッティングヒルの恋人」のところだよー、
いいでしょうー。」
と、自慢してみた。
すると、なんと、彼はこう言った。
「すごいじゃん!!
あの映画に出てるひとたちに会えるんだー!」
そんなわけありません。
あれ、フィクションですから。
富良野にある五郎の家に行っても、五郎さんは住んでないでしょ?
それといっしょだよ??
恋人の夢をこわすのは申し訳なかったが、突拍子もなさすぎるため、
ばっさりと訂正させていただきました。
やれやれ。
天然であることは、いいことだ。
いっしょにいるときはおもしろいからいいけど、
遠く離れていると、あまりの天然ぶりに心配が募る。
わたしはその天然をおもしろがってるからいいけどさー、
ほかのひとにそんなこと言ったら、本気で心配されちゃうよ。
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