ABSOLUTE LIFE

すてきなものにかこまれ、すてきな音楽をきき、すてきなものをたくさん見ることが、心のビタミン補給です。
0

江國香織 「号泣する準備はできていた」

直木賞受賞作です。
なんとなく、納得できます。
とっても濃密な短編集。
運命の恋にめぐりあった女たちの、その後の生活が描かれる。



江國香織の本を理解できるようになったことは、
「おとなになってよかったなあ」
と思うことのひとつです。

とてもすきなのは、「じゃこじゃこのビスケット」!
ミクシィのコミュニティでも、
「じゃこじゃこ」という表現にノックアウトされたひと多し。
もちろんことばの響きもすきですが、ストーリーもすき。
わたしの場合は、大学を卒業するまでずっと、
人生がじゃこじゃこのビスケットだった。
そして、いろんなものを信じてた。
自分の歩んできた道のり、いままでしてきたこと、
いままでに学んできたこと。
それが決して正しくはないのだ、
ということを思い知らされるような現実ばかりぶちあたっていても、
なぜか、自分を信じられる強さを持っていたのに。
いまはそのかけらも見当たらない。
でも、そのことを除けば、わたしの人生は、
幼く、若いときよりも、ずっとらくになった。

そして、表題作の「号泣する準備はできていた」。
はっとするような表現がたくさんあった。
たとえば。

「私の心臓はあのとき一部分はっきり死んだと思う。
 さびしさのあまりねじ切れて。」

たぶん、わたしの心臓も一部分死んだことがあるのだろうと思う。
だからこんなにもこの一文が胸に突き刺さるのかな、と。
確かにあれは、ねじきれるような、物理的な痛みだったと、
いまもはっきり思い出すことができる。
そして、フィッシュスープを飲めば、わたしも強くなれるかしら、
と、思い、きっと飲んでみようと思った。

そして、「そこなう」。
これを読んで、決定的にわたしは胸が痛くなってしまった。
そのひと自身に変化はなくとも、
ある小さなきっかけを境に、
自分の知っていたはずのそのひとが消えてしまうことがある。
そのきっかけは、ほんの些細な、とるにたらないことなのに、
決して元に戻すことはできないのだ。

全体的に悲しいお話が多いのに、読んだあと、前向きになれるのは、
きっと、彼女の描く世界が、本当にすてきなものだけで
満たされているからなんだろうなーと思いました。

関連記事

Category :
該当の記事は見つかりませんでした。

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://absolutelife25.blog36.fc2.com/tb.php/598-f5e4537a