小さく逃避行。
ついに、ストレスが絶頂に達した。
原因は、慣れない日雇いの仕事のこと。
日雇いだから、日々、ちがう現場に入る。
毎日どんどん新しいことを吸収しなくてはならないうえ、
現場ごとにルールがちがうので、ものすごく混乱する。
また、接客はダイレクトにリアクションが返ってくるため、
緊張の度合いも全くちがう。
わたしはもともと恐ろしく頭が硬く、恐ろしく不器用で、動きが鈍く、
最悪に要領が悪いので、どの現場でも空回りっぱなしだ。
日雇いの仕事なのだし、
派遣先もそれほど高レベルの仕事を求めていないであろうことは
重々承知なのであるが、
それでも、わたしは自分を責めずにはいられないし、
周囲の無意識かつ冷ややかな視線がずきずきと突き刺さる。
無能すぎるわたしは、どこにいても、
自分の存在価値を見出すことができなくなってしまった。
そんな折、とある派遣先で、
「いくらなんでも、あんまりよ」
という仕打ちを受け、我慢も限界に達し、その場でぽろりと泣いた。
涙よりも鼻水のほうが先に流れ落ちたのが悲しかった。
帰ってきて、恋人と居酒屋へ行き、
そこでもぼろぼろ泣きながらおいしいごはんをいただいたのだが、
それでも収まらず、
家に帰ってもわたしはしくしくと泣き続けたので、
こんな空気を恋人の家に持ち込むのは申し訳ない、
と思い、恋人に
「家出してくるわ」
と言い残し、真夜中過ぎに、夜の逃避行にでかけることにした。
恋人は、「やめなよー」と言っていたが、
眠気に勝てなかったらしく、目が半開きで、たいそう気味悪かった。
そうか、その程度なのか、とふてくされながらも、家を出た。
こんなとき、かっこよい女だったら、
かっこよいスポーツカーに乗り、
かっこよくハイウェイをぶっ飛ばし、
かっこよいロックなんぞを聴きながら、Driving All Night!!
といったかんじなんだろうが、
わたしはスポーツカーを持っていないのでちゃりんこにまたがり、
ハイウェイに乗れないので、田んぼの合間を縫い、
ロックのかわりに蛙たちの大合唱だ。
理想と現実のギャップの激しさに、涙は、乾いた。
真夜中すぎの、田舎の本屋さんは、週末の夜でもすいていた。
気晴らしに、前向きになれそうな本を選んで読んでみた。
1つめは、「朝型人間になれる方法」という本。
わたしは低血圧で、朝に弱いのだが、
それは、夜、適正な時間に眠っていないことが原因であるとわかった。
これは大きな発見であった。
ほかにも、いろいろ目からうろこな内容が書かれており、
それ以来、わたしの睡眠ライフは快調である。
もうひとつは、
「運のいい女、悪い女の習慣」
という、どうにもうさんくさい本。
これは、やたらとポジティブすぎる内容で、
読んでいてちょっといらっとしてしまったが、
わたしの考え方は、明らかに「運の悪い女」であったため、
悔しいので、運のいい女になってやる決心をした。
帰り道、ちゃりんこをこぎながら、いろんなことを考えた。
これが、今できるわたしの精一杯なのだし、
仕事に行けば、役立たずでも給料をもらえるので、
あんまり深く考えないことにした。
そして、自分が無能であることを認めることにした。
うしろ向きな思考も、時には有効ですから。
帰ってみると、恋人はぐっすりと眠っていた。
すこしは心配しろよ、女が夜中2時までちゃりんこでふらついてたのに。
ストレスって、知らない間に増幅されてるものですね。
こんなに溜め込んでたなんて、気づいてなかった。
今後はこんなふうに狂わないよう気をつけよう。
- 関連記事
-
- こねこちゃん。 (2007/06/17)
- 料理サイト。 (2007/06/15)
- 小さく逃避行。 (2007/06/12)
- 大バーゲン。 (2007/06/10)
- 下着屋さんになりました。 (2007/06/09)