よしもとばなな 「デッドエンドの思い出」
最近、よしものばななの本を何冊か買って読んでいるのですが、
これは、なかなかにいいですね。
これまでのいちばんは、「海のふた」でしたが、これもいい。
あとがきに書いてあったのですが、
よしもとばなな本人もすごくこの作品を気に入ってる模様。
それは、わかるような気がする。
これは、短編集なのですが、どの主人公も、
前向きに、一生懸命自分の生きる道を進もうをしていて、
みんなそれぞれがポジティブなオーラを発しているように思う。
今までの彼女の作品の主人公たちは、
自分ではどうすることもできないような出来事を通して、
時間をただ客観的に流すことで、立ち直っていったような気がするのですが、
この作品の女の子たちは、みな、
自分の意志で自分の生活を新しく作り直しているような気がするのだ。
中でもいちばんきにいったのは、表題作の「デッドエンドの思い出」。
遠距離恋愛中だった婚約者が、べつの女性と結婚することになり、
ものすごく傷ついた主人公が、すこしずつ、心を癒していく物語。
なぜこれがすきなのかというと、
西山くんのようなひとにあこがれるから。
物事に執着がなくて、来るもの拒まずなかんじで、
だれからも好かれる、つかみどころのないひと。
わたしはそういうひとになりたかったのに、まるで正反対です。
あと、「幽霊の家」という作品も、とてもすきだった。
運命的にひかれあう男女の物語で、
からだを通して味わう愛情とか、ぬくもりの描写が、
とってもすてきだったなあ。
最近「はじめての文学」というシリーズの本をみかけます。
これは、若いひと向けに、有名作家の短編をピックアップして、
作家ごとに編集したもののようなのですが、
よしもとばなな編には、この短編集から3つもの作品が収められていて、
そのことからも、この作品がいかにわかりやすく、普遍的なものか、
ということがわかります。
ちなみに、はじめての文学シリーズでとりあげられている作家さんたちは、
とってもすてきなひとたちばかりで、
出版社のセンスのよさが感じられました。
ぜんぶを読んでみたい。
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