江國香織 「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」
このタイトル、すごく惹かれる。
そう、人生は、川の流れのようなもの。
泳ぐのに、決して安全ではないし、適切でもない。 だれかを愛しすぎたために
抗えないほどのつよい流れに
飲み込まれた女たちのお話。
10作品の短編集ですが、
どれにも共通しているのは、
主人公が、恋人を
愛しすぎてしまった、
ということ。
いちばんすきなのは、
「うんとおなかをすかせてきてね」
というお話。
主人公と、その恋人は、毎夜いっしょに食事をする。
ものすごい量を食べる。
フィクションだとはわかっていながら
あまりの食べっぷりに、羨望すらおぼえる。
そして、きわめつけは、主人公のこの言葉だ。
「あたしたちは、毎日おなじものを食べているから、
あたしたちのからだは、おなじものでできているはず」
いっしょに生きている、というのは、そういうことなのかもしれない、
と思った。
わたしは文庫版を読んだのだけれど、山田詠美の解説がすばらしかった。
ふつう、解説って、けっこうひどいことが多い。
いや、そんな解説、つけなくていいじゃん、
っていうのが多いんだけど、
山田詠美の解説はすごい。
江國香織の作品の魅力を、あまりにも正確に描写していた。
作家って、すごいなあ。
人生は、両刃の剣。
常に安全や、幸せが保証されているわけじゃない。
そして、地球は、正負の法則でまわってる。
愛しすぎれば、その分の苦しさがやってくる。
そんな、シンプルな法則を、すっかり忘れてしまっていた。
昨日、たくさんの言い訳をしたのだけれど、
わたしが自由に動き回る分、
わたしの動きを封じようとする圧力があって当然。
自分が正しいと思ってしていることも、
ほかのひとには、まちがっていると思われるのも、当然。
すべてのひとたちに、自分を正しいと認めさせることなんて、無理なのだ。
自分の正当性を主張することも、言い訳をすることも、無意味だ。
いちばんは、自分がたのしいと思う方向に進むことだけだ。
そのことを、いつも忘れては、思い出す。
そのくりかえしばかりだ。ばかばか。
泳ぐのに、安全でも適切でもありません。
それを知ってさえいれば、心の準備さえしていれば、
人生はそれほどむずかしくなく、苦しくもないのかもしれません。
そんなわけで、
明日から4日間、愛知へ旅に出ます。
帰ってきたら、愛知情報をたくさんお届けしますね。
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