ABSOLUTE LIFE

すてきなものにかこまれ、すてきな音楽をきき、すてきなものをたくさん見ることが、心のビタミン補給です。
5

江國香織 「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」

このタイトル、すごく惹かれる。
そう、人生は、川の流れのようなもの。
泳ぐのに、決して安全ではないし、適切でもない。

icon
icon だれかを愛しすぎたために
 抗えないほどのつよい流れに
 飲み込まれた女たちのお話。
 10作品の短編集ですが、
 どれにも共通しているのは、
 主人公が、恋人を
 愛しすぎてしまった、
 ということ。


いちばんすきなのは、
「うんとおなかをすかせてきてね」
というお話。
主人公と、その恋人は、毎夜いっしょに食事をする。
ものすごい量を食べる。
フィクションだとはわかっていながら
あまりの食べっぷりに、羨望すらおぼえる。
そして、きわめつけは、主人公のこの言葉だ。
「あたしたちは、毎日おなじものを食べているから、
 あたしたちのからだは、おなじものでできているはず」
いっしょに生きている、というのは、そういうことなのかもしれない、
と思った。

わたしは文庫版を読んだのだけれど、山田詠美の解説がすばらしかった。
ふつう、解説って、けっこうひどいことが多い。
いや、そんな解説、つけなくていいじゃん、
っていうのが多いんだけど、
山田詠美の解説はすごい。
江國香織の作品の魅力を、あまりにも正確に描写していた。
作家って、すごいなあ。

人生は、両刃の剣。
常に安全や、幸せが保証されているわけじゃない。
そして、地球は、正負の法則でまわってる。
愛しすぎれば、その分の苦しさがやってくる。
そんな、シンプルな法則を、すっかり忘れてしまっていた。

昨日、たくさんの言い訳をしたのだけれど、
わたしが自由に動き回る分、
わたしの動きを封じようとする圧力があって当然。
自分が正しいと思ってしていることも、
ほかのひとには、まちがっていると思われるのも、当然。
すべてのひとたちに、自分を正しいと認めさせることなんて、無理なのだ。
自分の正当性を主張することも、言い訳をすることも、無意味だ。
いちばんは、自分がたのしいと思う方向に進むことだけだ。

そのことを、いつも忘れては、思い出す。
そのくりかえしばかりだ。ばかばか。

泳ぐのに、安全でも適切でもありません。
それを知ってさえいれば、心の準備さえしていれば、
人生はそれほどむずかしくなく、苦しくもないのかもしれません。


そんなわけで、
明日から4日間、愛知へ旅に出ます。
帰ってきたら、愛知情報をたくさんお届けしますね。

関連記事

Category :
該当の記事は見つかりませんでした。

5 Comments

miki says...""
私もその本読みました。
同じようにそのシーン好き。
でも、もう一回読んでみたくなったので、今日から読むよ。
ひさしぶりにうさぎのブログゆっくり読めたんだけど
すごく力をもらえたよ。
全ての人に自分を認めさせるのは不可能だし
無意味。
いちばんは自分の楽しい方向に進むこと。
繰り返したくなるくらい、同感です。
気をつけていってらっしゃい!
2006.07.20 22:45 | URL | #- [edit]
JJ says..."よくぞ読んでくれました★"
「泳ぐのに安全でも適切でもありません」は江國さんの本のなかで「ホリーガーデン」に続き、2番目に好きな本なんですよ^^

どの話もすごくいいと思うのですが、「うんとおなかをすかせてきてね」 は特にいろんな意味で密度の濃い話ですよね。料理の描写もすごくリアルで、読んでるだけで身体が火照ってくるような気がします・・。

ちなみに個人的に一番好きなのは(←言いたい)「サマーブランケット」です(笑)


ある本で読んだのですが、人間は自分のしたことを必ず正当化できる便利な生き物なんだそうです。どんな道に進んでも大丈夫なんだったら、楽しい方に進むっきゃないですよねw
2006.07.20 23:46 | URL | #- [edit]
sabo says..."よみたいな。"
このタイトル、ぐっと来ますね。
まだ読んでいないので、ゆっくり味わって読みたいなあ。週末に本屋に行こうかな^^
うさぎさんは、愛知なのね。
会社は8月いっぱいなのね~。お疲れ様。
ピンポイントではまる会社に勤められる人は
本当に幸せだなあと思います。
そんな人は稀かもね。。
毎日を幸せにするために、新しい旅立ち。
大賛成です。がんばってね。
2006.07.21 07:09 | URL | #- [edit]
pianica says..."奇遇ですね"
私もつい最近読みましたよ、この本。
タイトルにひかれて。

短編集だけれども、ひとつひとつ、濃いですね。
幸せじゃないときも、幸せだったときの思い出を
胸に生きていけると感じました。
そして、時が経てば、人間立ち直るんですよね。

山田詠美のあとがき、すごいよね!
「たかが字なのに」って・・・
江國香織の文章って、
易しい言葉で書かれているけど、
説得力があると思います。

愛知情報楽しみにしてるよ~☆
2006.07.25 15:06 | URL | #- [edit]
うさぎ says...""
mikiちゃん、
やっぱり、あの短編がいちばんよ。
食べることは、しあわせに直結してるものね。
わたしのブログに共感していただけて、うれしいわー。
わたしも、ここに書くことで、自分を励ますことができているのかも。
たのしい方向に進むことは、時にはとても勇気のいることです。
たまに不安に押しつぶされそうになります。
でも、それを乗り越えないとね。

JJさん、
サマーブランケット!!
いいですよねーーー。
なんとなく、わたしのイメージのなかで、JJさんは、
あの男の子に重なるような気がする。
海辺のお家に住んでみたいな。
砂でざらざらでも、そばに海があるだけでいい。
そして、確か最後にオレンジをたべるのよね?
あのみずみずしさ、最高だわ。
がんばって、たのしい方への道を突き進んでいきたいと思います。

saboさん、
ぜひ、ぜひ!!読んでください。
江國香織の小説のある人生は、ない人生に比べて、
きらきら度がちがうのですから。
saboさんのおっしゃるとおり、ゆっくり味わうべき作品ですね。
すぐに納得できるストーリーではなくて、
いろいろ深いんですよ。
名古屋、行ってみたけれど、深い、深すぎます!!
いろいろ愛知のこともおしえてくださいね。

pianicaさん、
この作品ほど、タイトルが魅力的な作品はないのでは、
と思うほど、印象的なタイトルですね。
それに、解説を読んで、山田詠美の本を読まなくちゃ!って思った。
「読みたい」ではなく、「よまなきゃ!」って。

今後は、愛知情報たっぷりでお届けしていきます。
おもしろい街でしたよ。
おたのしみに。
2006.07.25 22:06 | URL | #1jxB54a6 [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://absolutelife25.blog36.fc2.com/tb.php/348-9f3c1a0a