吉本ばなな 「ハチ公の最後の恋人」
最近あまり調子がよくない。
いままで「ひまだー」と思ったことがなくて、
「とにかく時間が足りないーー」って思ってたし、
いつもひとりで遊んでたけど、「淋しい」と思ったこともなかった。
のに。
最近は、何もやる気が起きず、ひまだなー、と思うし、
「わたしって、ともだち少なかったんだー」と実感してしまった。
ある1つの目標を成し遂げてしまったから、気が抜けたんだろか。
とにかく、このごろわたしはすこしおかしい。
そんなわけで、とにかく現実感のない本を読もうと思ったのと、
mikiちゃんが、「この本のラストが、なんかいい」
と言っていたので、
吉本ばななの「ハチ公の最後の恋人」を読むことに。 ものすごく、現実離れしてて、
何だか拍子抜けでしたねー。
あえて、そういう物語を選んだのに、
そんな感想を抱くわたしは、
やっぱりちょっとへん。
霊感を持ったおばあちゃんに
「お前はハチ公の最後の恋人に
なるだろう」と予言され、
ハチという人物に出会った主人公。
その後本当に彼といっしょに生活し始めるのだが、
ハチは、インドへ修行に行く約束をしていたのです。
期限付きのふたりの生活を、淡々と描いていく作品です。
わたしも、「期限付き」の生活を送ったことがある。
それは、以前勤めていた職場をやめて、
実家に帰ってくることにしたときだ。
今の恋人が、わたしの恋人になったとき、
わたしは半年後に遠くへ引っ越すことに決めていた。
「期限付き」だったからこそ、恋人はわたしの恋人になった。
けれど、期限が間近に迫ってきたときの、
あのお互いの緊張感は、なかなかにすごい。
なるべくお互いに傷つかないように、気を使っていたり、
できるだけたくさんの思い出を残そうと必死にいっしょにいたり。
それは、すごく残酷なことだ。
けれど、再来月愛知に行っても、わたしたちは、また「期限付き」だ。
わたしたちの間には、ずーっと未来まで、距離がある。
でも、それでも、どうしても自分がしなくちゃならないことがある。
それを恋人も知っているし、恋人がわたしを止められないことも知ってる。
ハチもそういうものを持ってる。
だから、わたしにはハチの気持ちも、まおちゃんの気持ちもよくわかる。
ただいっしょにいることがだけがしあわせじゃなくて、
それぞれが確実に未来に向かって歩いてることをいっしょにたのしむことが、
本当のしあわせなんでしょう。
わたしのおともだちが、
「吉本ばななの本はね、わたしには子供すぎるのよ」
と言っていたのだけれど、
うーん、たしかにそうね、と納得してしまった。
夏に読むには、いいかもね。
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