三浦綾子 「氷点」
何度読み返しても、
「名作だー」と感銘を受ける作品。
ちょっと昔の作品ではありますが、
いつまでも文体のみずみずしさが
色褪せないのはすごいと思う。
まあ、ありえないストーリーだけどね。
病院の院長である辻口が家を留守にしているあいだに、
その妻夏枝と、同じ病院の眼科医村井が、お家で密会をしていた。
その間に辻口と夏枝の娘のルリ子が行方不明になり、
翌朝遺体で発見された。見知らぬ男に殺されたのだ。
悲しみのあまり
「女の子の養子がほしい」
という夏枝に対し、嫉妬に狂った辻口は、
犯人の娘を引き取り、夏枝に育てさせることにする。
娘が殺されてしまったところから、
家族ひとりひとりの気持ちが、それぞれちがう方向に暴走していて、
「みんなで思ったことをちゃんと話し合えばいいのにぃ」
ってわたしはずっと思っていた。
わたしの場合は、不安や不満をためこむことはできないので、
彼らの気持ちが理解できない。
けれど、心の本音は、そのひとにしかわからないよなあ、
と、この本を読んでしみじみと思ってしまった。
このひとの作品に共通しているのは、
純粋で、まっさらな心をもった登場人物が出てくることだ。
この作品で言えば、陽子がものすごく透き通った心をもっている。
架空の人物であるとわかってはいるけれど、
ひとを憎むことを知らない彼女に
「わたしもこういうひとにならないとなあ」
と心が洗われる思いでした。
あとは、夏枝がおもしろいですね。
とても美しくて、ちやほやされまくって生きてきた彼女には、
幼稚な部分がたくさんあって、
「美人だと、こういうふうに育っちゃうのか。
ぶさいくでよかった。」
などと負け犬の遠吠え的発想をしてみた。
何度も映像化されてて、
いちばん最近では、浅野ゆう子と三浦友和がドラマで演じてましたね。
あれはちょっとさむすぎて、見る気になれませんでしたけれども。
昔の映画とかを見てみると、おもしろいかもしれません。
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