小川洋子 「博士の愛した数式」
わたしにしては、
時代の波に乗った作品を読みました。
古本屋さんで出会い、即手にとりました。
映画が好評だったし、
小川洋子の本は、とても読みやすいしね。
あまり期待をしないで読んだせいなのか、
予想以上におもしろかった!
すごくおきにいりの本になりました。
読むと、心があたたかくなります。
博士は、数学の教授をしていたのですが、
事故にあい、80分しか記憶を留めることができません。
主人公は、そんな博士のお家へ、家政婦として出入りします。
博士は、こどもを全般的に溺愛していて、
家政婦さんに息子がいることを知ると、
彼をつれてくるように促します。
そこから、奇妙な3人の生活が始まります。
この作品を読んで、驚いた。
それは、ふつう、男女が登場したら、必ず恋愛感情が出てくるものだし、
記憶を失った、なんてなったら、人の生死に関わるミステリーが出てくる。
でも、この作品には、そういうダークな要素が一切ない。
嵐の如き事件がないのにも関わらず、
とにかくストーリーにひきつけられてしまう。
ただひたすら純粋に、家政婦さんは博士を大切にしていて、
博士は息子を大切にしていて、
息子も幼いながらに博士を大切にしている。
ただ、それだけなのに。
こんなに純粋に引き込まれる作品には、めったに出会えないでしょう。
また、ストーリーの核となる「数学」についての記述も、
とっても興味深いものだった。
文系のわたしにとっては、
「数学にも、ドラマはあるんだな」
と、新しい数学の側面を見た。
そういう意味でも、この作品はすばらしい。
もし博士が数学をおしえてくれたら、
わたしはもっと数学をすきになれていたかもしれない。
これはぜひみなさまに読んでいただきたい!
本当に心の底から「ああー、いいわーー」
と思える作品でした。
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