江國香織&辻仁成 「冷静と情熱のあいだ」
何をいまさら、
というかんじがするのですが、
久々に読んだら、やっぱりおもしろかったので。
2人の作家が、男女それぞれの視点から1つの物語を描くという
かなり画期的な手法が取り入れられていて、
それは成功だったなーと思います。
率直におもしろいと感じましたから。
ただ、登場人物のそれぞれの気持ちは、まったく共感できませんでしたけれど。
読み方によって、感想は全然ちがってくると思います。
2つの本はとても対照的だから。
それぞれの本を交互に読めば、
彼らの生活と同時進行で、はらはらどきどきしながら読んでいけるし、
別々に読めば、それぞれの気持ちの流れを読み取ることができる。
わたしは、赤い方を読んでから、青い方を読みました。
ちょっと失敗だったかな。
順番を逆にすればよかったのかも。
だって、順正は、あまりにも後ろ向きなんだもの!!
わたしは常に未来しか見ていなくて、
過去をすっぱり忘れていくタイプなので、
彼の気持ちが全然理解できませんでした。
なぜに、あんなに過去にこだわることができるのか、
わたしにとって、彼の気持ちはミステリィ。
一方、あおいは、
あんなにしあわせな生活を送りながら、心の闇を抱えていて、
それもまた理解し難い。
うーん、なぜにあんなに甘いマーヴにとけてしまわないのだろう。
わたしなら、めろめろになってしまうだろうなー。
あとは、芽実とマーヴが、どうしてあそこまで順正とあおいをすきだったのか、
全然わかんない。
もっといいひと、いると思うぞーー、と、わたしは声を大にして叫びたい。
どちらの作品も、日本語がきれいですね。
すてきな表現がたくさんちりばめられていて、
読むのを止めるのがむずかしかった。
そして、イタリアの風景が目に浮かぶほど、情景の描写が細やかで、
まるで自分もイタリアにいるかのような気分になれました。
わたしも、常に、冷静と情熱の間で揺れています。
とても不安定で、曖昧だけれど、
その間をいかに泳ぐかが、自分自身の本質なのかもしれないと思いました。
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