江國香織の世界。
会社で、向かいの席に座っているおんなのこと、本の話になった。
その日は、村上春樹のイスラエル賞のスピーチと、
中川氏のへろへろぶりが比較されていた日。
彼女も本を読むらしいけれど、なんと、まだ村上春樹を読んだことがないと言う。
まあ、めずらしい。
彼女が、
「わたし、江國香織の本とかがすきなんですよねー」
と言ったので、わたしはひとりでざわめいた。
なんですって!!
いちばんすきな作品は?!
「きらきらひかる、ですねー
このひとの文庫本は、全部持ってますよ」
あーー、もっとマニアックな話がしたかった。
わたしの理想の恋人が深町直人であることとか、
衿の気持ちがわかるかどうか、とか、
透と耕二だったらどっちがすきか、とか、
神様のボートの結末はどうなったと思うか、とか。
もうあと2日くらいでわたしは退職なのに、
もっと早くから江國バナシをしていたかったよ…。
残念無念。
そんな彼女が、とってもすてきなことを言った。
「うさぎさんて、江國香織の世界の人みたい。
最初に会ったときから、そう思っていたんです」
わたしは、またしてもひとりでざわめいた。
常日頃、江國ワールドに浸っていて、洗脳されているので、
そういうオーラがにじみ出ていたのだろうか。
でも、あの世界の住人になりたいと思って日々を生きているので、
それは、ここ数年でいちばんのほめ言葉でした。
わたしの理想は、「東京タワー」の詩史さんです。
映画の黒木瞳ではなく、原作の方の。
経済的余裕のある夫がいて、若い恋人がいて、
移動はタクシーで、自分の店まで持っている。
なんてすてきなんだろう!と。
そのものにはなれなくても、
江國ワールドのように、日常のディテールにも美意識を持って生活しよう、
と思ったのでした。
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