手料理で、おもてなし。
ホームステイを始めて1ヶ月半。
このあいだ、まったく料理をしていない。
ホストマザーのカーマンのお手伝いはたまにするものの、
自分のランチすら、スーパーで買ってきている。
だって、自分で作った料理は、全然おいしくないし、
自分の家以外のキッチンで料理をするのがいやなのだ。
わたし、ありえないくらいに要領悪いからね。
でも、料理は文化だ。
わたしの作る手料理は、彼らにとって思い出になるにちがいない、
それがたとえおいしくなかったとしても、ね。
ロンドンは大都市なので、かなり多くの日本人が滞在しており、
日本の食料品のお店がある。
いちばんメジャーなのは、
ピカデリーサーカスという中心部にある
「ジャパンセンター」ですね。
その名の通り、日本のものが買えます。
というわけで。
材料は問題ない。
問題なのは、レシピだ。
なぜなら。
ホストファザーのマイクは、ベジタリアンなのだ。
ベジタリアンは、肉とシーフードをきらう。
匂いすら、だめなのだ。
日本料理の根本である「だし」がきらいなのだ。
さーて、いったいわたしは何を作ればいいのやら。
カーマンは、
「とうふを使えばいいじゃないの」
と言うが、とうふだけの献立って、冷奴しかないじゃないか。
ネットで探しても、ほかのひとたちはみな
「お好み焼き」
とか、
「日本独特のとろりとしたカレー」
とか、
「肉じゃが」
とか言ってる。
わたしだって、大昔、アメリカにステイしていたときは、
肉じゃが作ってあげたわよー。
あの時は、メニュー即決だったのだが、今回はちがう。
日本には、ベジタリアンはほとんどいないからさ、
野菜だけの献立って、むずかしい。
わたしはひたすら考えた。
それで。
夏だし、ラーメンサラダとおにぎりをつくることにしました。
ラーメンサラダの上には、うす焼きたまごと、きゅうりと、
セロリとパプリカをトッピングし、
ごまドレッシングをたっぷりとかける。
おにぎりは、日本米を炊いて、
ジャパンセンターに売っていた高菜を混ぜ込み、にぎった。
ほっかほかのごはんをにぎって、のりでくるんだら、
カーマンが、
「それはちがうわ」
と言って、写真のように海苔をカットしていた。
…それは、まんがの中だけなんだけど…、
そして、わたしは日本人なんだけど…。
こっちのひとは何事にも自分の主張を押し通す。
いちいち反論してられないので、そのままおまかせしました。
しかも、彼女はわたしの料理がまずくて食べられないかもしれないから、
ちゃんと予備の食事も用意していたよ…。
……。
まあ、いいけど。
「できましたよー」
とマイクを呼ぶと。
「うわー、カラフルですごくきれいだー、おいしそうだー。
カーマンは野菜をこんなに細かく切らないよー」
と言って、ずーっとその料理を見ていた。
なるほど。わたしの料理は、繊細さ、という点において、
日本らしさを伝えることができた模様。
そして、「とてもおいしい」と言って、たくさん食べてくれ、
カーマンは、
「どうやって作るの?作り方をおしえて。
マイクに作ってあげなくちゃ。」
と言っていた。
おほほほほ。
わたし、野菜を刻んでごまドレッシングをかけただけよ。
何も味付けしていないわー。
カーマンは、
「すごいわー、うさぎー。」
と言って、わたしをたいそうほめてくれた。
「本気を出せばこんなもんよ」
と言いたかったが、英語でどうやって言えばいいのかわからず。
まだまだ修行が必要ね。
とりあえず、次回のカーマンとのデートは、
ジャパンセンターに行くことに決まった。
とりあえず、わたしの女子力をホストファミリーに証明できたし、
みなよろこんでくれたので、
今回のミッションは成功だったと言えよう。