今日はおやすみの日。
がんばって、めざましよりも早く起きたのに、何もする気になれなかった。
寝起きから、チョコレートをたべ、ごはんをたべ、
アイスクリームをたべ、みかんをたべ、
それでもまだだらだらしていた。
さすがにすこし気がとがめておなかを見たら、まるで、妊娠6ヶ月だった。
なんだこれは、と自分でもおどろいた。
何かがわたしの腹のなかにいる。
それにしても、布団でしっかり眠るのとちがい、
太陽の光がさしこむ昼間に、ソファでうたたねをするのは、
なんて気持ちがよいのでしょう。
「しあわせって、こういうことなのかもー」
と、おとーさんがパチンコでもらってきた毛布にくるまり
うとうとしながら、本気でそう思った。
わたしの前世は、きっとネコだったのだろうと思った。
そんなわけで再び目を覚ましたときには、
もうとっぷりと日が暮れていて、真っ暗になっていた。
今日はおかーさんが、泊りがけでマッスルミュージアムを見に出かけたので、
ごはんのしたくや、台所のかたづけなどをしなくてはならないのに。
どうしようどうしよう、
と家のなかをうろうろしていたら、おとうさんが帰ってきた。
「ごはんたべにいくか」
ということになり、久々におとうさんとふたりでデートをすることになった。
とりのいとうに行こうかしら、と提案すると、
めずらしくおとうさんは「おう、行こう、たべたい」とのってくれたのに、
定休日だった。
食事にあまり興味をもたないおとうさんがせっかく「たべたい」と
言っていたのに、とりのいとうはおやすみだったので、
わたしはすこし悲しい気持ちになった。
結局「肉にしようか」ということになり、牛角へ行くことに。
牛角のとなりには、平和園というローカルジンギスカン店があったのだが、
平和園は、車もとめられないほど混んでいたのに対し、
牛角には、ぜんぜん車がとまっていなかった。
ローカルエネルギーの強さに、わたしは感心した。
おとうさんは、今日が牛角デビューで、
メニューの豊富さに混乱していた。
さらに、七輪の熱さに「あつい、あつい」と困惑していた。
平和園のほうが、慣れているのでおちつくらしい。
おとうさんは、自由人なので、
ふたりで食事をしているからといって、
父と娘の会話をたのしもうという気がさらさらない。
おとうさんは、ひとりでゴルゴ13を読んでいた。
わたしは恋人とメールをしたり、
どんぶりいっぱいのわかめスープを飲む父をじっと見たりしていた。
帰りに「あしたのあさごはんをどうしようか」という話になった。
そうか、あしたのあさもおかーさんはいないんだー、
と思ったら、なんとなく心もとない気持ちになった。
こどものころとおなじだ、と思った。
もう25歳にもなるのに、両親が留守にすることを心もとなく思うのは、
あの頃とまったく変わっていないのだ。
すこし、ふくざつな気分になった。